私が経験した占有者との交渉の前に競売のメリット・デメリットをもう一度考えてみます。
デメリット
デメリットは言い換えればリスクですよね。
こちらは前回、前々回の記事でご紹介していますので割愛させて頂きますね。
ではメリットとは何か?
メリット
①市場価格よりも安く購入できる
②名義変更の手続きは裁判所が行うので騙されて購入することがない。
③不動産会社が仲介として介在しないので仲介手数料など不要な支払少なく済む。
概ね書かれている記事は上記の内容がほとんどといってよいでしょう。
つまり、メリットとデメリットを考えるとデメリットが大きいことをほとんどのサイトでは紹介されています。
確かに事実はそうです。
メリットとデメリットを比較してデメリットが多ければほとんどの方は止めませんか?
儲かるか損するか?
損するならしませんよね?
これは私の経験から言えることですが、一過性で試しでするなら競売は向いていません。
なぜなら?
競売にもトレンドがあります。
しかも毎回毎回変わります。
なぜトレンドが変わるのか?
それは入札する会社・個人の数によって変動するからです。
どんな方が入札をしているか皆さんご存じですか?
どうぜ不動産会社か投資家がほとんどだろう?そう思っていませんか?
まさしくそうなんです!
中には個人で自宅を購入するために競売をされる方もいてますがほんの一握りの人です。
私の知り合いの司法書士の先生がご夫婦で自宅を購入する際に、良い場所でなかなか売り物件が出ないところで競売で物件が出てきたので入札して見事落札して購入された先生がいてました。
今大切な言葉が出てきたの気づきましたか?
「なかなか売り物件がでないところ(地域)」です。
一般の取引では滅多と市場に出てこないエリアなどがこの不動産業界ではよくあります。
なぜ市場に出てこないのか?
不動産会社へ相談に行かれてるお客様が待っているからです。
「このエリアで売り物件が出たら紹介してほしい」
「このマンションで売り物件が出たら教えてね」
など、人気がある特定の場所にある物件は市場に出てきません。
なので、一般の方はこの地域は売り物件が出ないと思い込んでいる方がいてるかもしれませんが、実はそうではないんです。広くお客様を募集しなくても買いたいお客様がいてるだけなんです。
言い換えると、それだけ人気がある物件は市場に出れば売れる!っと言うことです。
まさしくそんなお宝になる不動産が競売だからこそでてくることがあるんです。
恐らく不動産の勉強や相場などを見ている方であればお住まいの地域でそのような不動産はどのあたりが該当するのか?ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
数は少ないですが、そんな物件に出会えるのは競売市場にしか存在しません。
その場合は入札件数は多くなるのでかなり入札額も高くなりますのでご注意ください。
実際に私も競売に従事しているときにお宝物件と出会いました。
その物件は区分のファミリーマンションでした。
近年駅前が開発されている大阪府下の郊外の物件でしたが、駅直結ということと、本当に市場に出回ることが少ない物件でした。レインズでも成約事例の登録数が少なく販売価格を検討するうえで苦労したのを覚えています。
当時の詳細の記憶は定かではないですが、
入札件数は30件程度
次順位との差額は100万円あけての落札でした。
※本来は100万円もあけてしまうと入札としては失敗ですが、それを上回る期待感で落札できたことを喜びました。
販売プロセスは?
①居住中の物件で退去交渉が必要でした。退去交渉は約1ヶ月で退去。
②室内は築浅でしたので改装費は70万程度(犬を飼育していて、床におしっこ跡があったため貼替等に伴う原状回復費がメインでした)
③販売期間は1ヶ月程度。レインズへの掲載はしませんでした。
④販売価格と利益は?
当時で築7年落ち程度の物件でしたが、新築分譲時価格以上の販売価格で売却できました。
気になる利益は諸経費(販売時の仲介手数料・登記費用等も含める)を引いて300万円ほどでした。
一概に収益性が良い、悪いの判断はできないと思いますが、競売ビジネス(転売事業)におていは、良い部類に入ります。
このようなお宝物件は滅多と出ませんが、継続して入札していることで出会うことができます。
また、継続していくことで落札している他社との比較を見ることができます。
どの会社も資金に限界があります。購入しすぎて売却が進んでいなければ入札を抑えて販売を強化したりします。
そうなると、いつも多く落札している会社の落札件数が減少します。
このような巡り合わせのときが入札のチャンスです。
このタイミングで入札した物件があれば高値での入札でなくても落札できるかもしれません。
かなり前置きが長くなりましたが、私が経験したリスク(占有者交渉)について書いていきたいと思います。
今回は上記で取り上げた事例をご紹介させて頂きます。
落札物件を簡単に紹介します。
①3LDKファミリーマンション
②以前は奥様、子供さんと3人で居住。(落札時はご主人一人で住んでました)
③一般的などこにでもいてる普通の会社員さん。(高圧的ではなかったです)
④お金がない。(これはほとんどの占有者共通やと思います)
どのようなアプローチをしたのか?
①開札には開札場へ行かずネット(BIT)で落札結果を確認する。
落札結果では名前などが掲載されませんが、落札額と法人、個人の種別がでるのでそちらを見れば落札したかどうかがわかります。
②開札の翌日、物件所在地へ占有者宛に手紙を郵送。
→手紙が届いて連絡が入るのを待つのですが、連絡をしてくる方はほとんどいません。
連絡をしてこない理由。
競売になってから様々な所からDMが届きます。
任意売却の会社からの手紙がほとんどです。
毎日とは言いませんが次から次へと手紙が届くので本人は見なくなります。
実際に落札した後のお部屋に立ち入ると任意売却の会社からのDMが山のように置いています。もちろん、直接来られている方もいてるので名刺や資料も山盛りです。
③売却許可決定が下りたら裁判所へ行って許可決定の写しを取ります。
④現地へ行きます。
現地へは直接お会いできるか会えないかわかりませんので、どちらでも対応できるように準備していきます。
今回の場合はマンションでしたので管理人との関係性作りもポイントです。嫌われてしまうと何かと今後の交渉や売却でスムーズにいかなくなるので、仲良くなるように心がけます。
④-1
インターホンを鳴らして直接お会いできる場合は、売却許可決定の写しをご本人に見せて落札した人間であることをお伝えします。
その日はそれがメインで、次回に今後の引越しに向けての話し合いの日程を決めます。
④-2
直接お会いできない場合は、ポストへ封書を投函します。
※マンションの集合ポストにはなるべく入れないようにしましょう。集合ポストへ入る郵便物等は先ほどご説明した通り本人は読みません。
なので、管理人へ断りを入れてお部屋の玄関にあるポストへ直接投函しに行きます。
これも手紙をポストの中へいれてしまってはダメです。半分ほどでてるようにして、気づいてもらうようにしましょう。
通常はそこのポストへ投函されるのは中の住人間などがメインなので、開封率が高くなります。
私の経験では住んでいれば90%以上の確率でお電話入りました。
ちなみに今回の方は④-2のケースでお会いしました。
⑤面談日
住まわれている近くの喫茶店などを利用。必ず誰かがいてる、見てる場所でお会いしていました。
これは自分自身のみの保全もそうですが、占有者が私から脅迫を受けたと言われないためです。なので、面談した時の記録を残しておくとよいです。
お話の結果1ヵ月以内での退去の約束をしました。口約束ではなく書面での取り交わしです。
差し入れ形式でなく、互いが控えを持つ書面にして双方が持つようにしましょう。
※ポイント
失礼な書き方をしますが、占有者は約束を守らない人種だと決めてあたることです。約束を守れているならば競売になるようなことにはなりません。
なので、本人が口にすることは真に受けず、こちらの話が優位に進めれることを考えた対応をしましょう。
今回の方もそうでした。
引越しするのにお金がない。会社へ前借をお願いしているけど厳しそうだと。
なので、引越し時期を約束した日程からずらしてほしい。
これはよくある話なので次回の期日を決めます。この時に大切なのが単なる日付の延長で終わらせないということです。ここでは「飴と鞭」を使います。
約束の期日に退去できれば室内の荷物はこちらが処分してあげる。
期日までに退去できなければ名義変更後の家賃を請求する。など、どちらを選ぶ方が損か得かを本人に分からせてこちら主導で進めます。
⑥1か月後に退去。鍵の引渡し。
ここまでくれば、後は商品化へ向けて動くのみです。
大切なポイントは④⑤です。ここが占有者によって対応が様々に変化していくのでこれは経験でカバーしていきます。
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